本局の感想戦の模様は、コメント欄に補足してあります。序盤で藤井九段がリードを奪い、機敏に開戦してリードを奪って終盤となりました。ところが決め手を逃しているうちに、逆に丸山九段の勝ちとなります。ハイライトは95手目、丸山九段が▲6四香と打った局面。実はこの▲6四香は負ければ敗着となったであろう手で、代わりに紛れをなくして▲4七玉と上がっておくべきでした。本譜、藤井九段は(1)△7一金と寄りましたが、局後「死んだ方がいい」と嘆いた手。▲5一飛成とされて万事休しました。後手玉は▲8一金の詰めろとなってしまい、はっきり負けです。ここでは代わりに(2)△5二香が最善手でした。以下▲5三歩△同香▲同馬△2三飛成(!)▲同飛成△5八銀(参考1図)で、なんと先手玉は受けが難しい。
この筋を丸山九段はまったくうっかりしていました。対して藤井九段は狙っていたのにと残念そう。△4七金と△4九金、この2つの筋があって妙に受けづらいのです。放っておけば△4九金▲5七玉△6七成桂までの詰み。(A)▲3九玉は5四馬の筋をずらした効果で△1八成銀と引いて受けなしとなります。
ただし参考1図で後手勝ちかというとそうとも言い切れません。感想戦で戸辺四段指摘の妙防(B)▲5九金(!!)がありました。
これでどう応じても後手の包囲網は一瞬ゆるみます。以下先手玉はきわどく逃れていそう。ただし実戦でこの妙手を発見するのは至難でしょう。ともかくも、藤井九段は95手目△7一金で代わりに△5二香と打つべきでした。