▲佐藤康光二冠-△森内俊之名人戦は、20時ちょうど、121手まで佐藤二冠の勝ちとなりました。消費時間は3時間59分。勝った佐藤二冠は3勝1敗となり、暫定トップ。森内名人は3勝2敗で一歩後退です。(棋譜再生ページのコメント欄に、感想戦の模様を追加しました)
詰めろの△5九飛に、角を取るなら取れと▲6九歩。いよいよ最終盤です。
取るなら取れと▲3七飛。観戦記担当の椎名龍一さんによると、この手を見た森内名人は「そっか」と呟いたそうです。
▲3七飛には△同成銀が自然ですが、その形は佐藤陣に全く遊び駒がありません。
森内名人の△3六銀は、▲1三歩成とされてダメではないかと検討されていました。
しかし▲1三歩成には△5七桂成の勝負手。以下▲同角△4七銀成▲1八飛なら、△5七成銀と角を取ってどうか。
佐藤二冠は△3六銀に対し、一回▲7五歩と突きました。これは△5七桂成に▲7六銀と逃げるスペースを作る狙い。入れば非常に大きな利かしとなります。
銀取りに構わず▲6七銀。一時的に銀桂交換になりますが、後で▲2六桂の狙いが残ります。△7七桂成▲同桂の形が7四金の自由を奪うことにもなるので、取り引きとしては先手が得。
▲6七銀以下、△9五歩▲同歩△6四歩と進展しました。
端に味を付けての△6四歩は、いかにも森内名人らしい勝負術。ここ△6五金などでは体勢が伸び切ってしまい損。じわーっと突き上げる△6四歩が好感触です。
図は▲7三角成を狙う▲8四角に対し、森内名人が△7四金と持ち駒を投入したところです。
現状は玉の堅さ、駒の効率、歩の枚数とも先手が優っているので、おとなしく△6二銀などではジリ貧。この金打ちは局面の流れを早くして、ジリ貧を避ける狙いと思われます。形勢は先手有利で間違いでしょう。
△4二飛に▲5八銀は受け一方の手かと見られていましたが、実は図の▲3八飛を狙ったアグレッシブな手だったようです。
仮に▲5八金・▲3八飛型、つまり△6九銀からの金銀交換が無い形であれば、▲3八飛には△4九銀の割り打ちがあります。しかし本譜はその筋がない。47手目▲8八玉は、この展開を視野に入れた「誘いの隙」だったのかもしれません。
図は森内名人が△4二飛と回ったところ。
玉飛接近の悪形ですが、△4七飛成と成り込めれば玉と飛車が離れ、好形になります。
△4二飛に対し、佐藤二冠は渋く下から銀を打ちました。
この手順だけ見ていると、先手森内名人、後手佐藤二冠という感じです。